主催 | 一般社団法人家庭教育推進協会 |
参加者 | 26名 |
講演者 | 理事 水野 達朗 理事 藤本 琢 代表理事 上野 剛 |
司会進行 | 坂下 雅代 |
5月30日、関西にて待望のセミナーが開催されました!今回のセミナーは西日本各方面から集まった方々から醸し出される雰囲気なのか?緊張の中にも関西らしい余裕(図太さともいう)が漂っていたようで、リラックスして臨めた気がします。関東セミナーと同じプログラムで行われましたが、関西セミナーのまとめとして一受講生の立場から、この場をお借りしてセミナーの内容により迫ってみたいと思います。
講演の最初は水野先生。ご自身のブログからも分るとおり、ユーモアにあふれ、たくさんの引き出しをお持ちで落ち着いたお話ぶりでした。ですが、「予防的な家庭教育」に対する秘めたる情熱がひしひしと感じられる講演となりました。
先生は長年、各家庭からの相談に対しての家族療法や不登校児童の復学支援(訪問カウンセリング)を手がけてこられる中で、もっと早く取り組んでいれば…という思いが募っておられたそうです。何とか「予防的な家庭教育」として各家庭に広めることができないかーそう考えて作られたのが、カウンセラーの技術と家庭教育で大切な理念を上手くドッキングさせた親のカウンセリングマインド(PCM)という新たな家庭教育の理論でした。この六年ほどは個々のお子さん方への支援にお忙しくされる傍ら、その普及に尽力されておられます。
教育委員会などへ働きかけ始めた当初は、学校ではスクールカウンセラーを配備するなど学校だけで努力をする方向で考えられていたそうで、先生の家庭教育の話などは鼻にもひっかけられないような状況だったとか。
それが今では学校のみならず、各家庭でも行き渋り段階での早いうちからの相談が増えてきたことなどから、随分認識が変わったことを肌で感じられるようになったそうです。そして今こそ、声を大にして家庭教育の大切さを広めていくときではないかと考えられて、今回のこの協会の設立に至ったということでした。
そして福澤諭吉大先生の学問のススメならぬ、「家庭教育のススメ」=学校へ来ない子にならないよう、自立心を養える家庭にすることを掲げておられました。先生はまさに家庭教育維新をになっておられる志士ではないかと思いました。
お二人目は藤本先生。いかにも先生らしい、コッテコテの関西弁~あー脱線かしらと思いきや、「思春期の子どもへの接し方」という、聞いたその日から役に立つという有難いテーマについて、とっても楽しく講演していただきました。
子育てにはキーとなる時期として、第一・第二反抗期と呼ばれる時期があり、同じ反抗期という名称がついても、子どもへの対応の仕方は大きく異なっています。
第一反抗期(3-4歳に)は、子どもの受け入れがたい意思表示や要求に対して、親がきちんとした強い抑制をかけることで初めて強い意思が育ちます。
第二反抗期(思春期)は、子どもが自分を肯定するために他者を否定しようとする時期。それを親の方が十分に理解してやり、子どもを他者として認めてあげるあり方が大切となります。 この時期の子どもの言動には裏切られたと感じる場合も多いが、その場では偽りない気持ちからのことなので汲んであげること。そして最後は親が「子どもを信じる」ことが重要になってくるそうです。
私の場合は第一反抗期にうまく抑制をかけてやれなかったことが不登校の辛い経験につながってしまいました。今、第二反抗期にさしかかっている息子ですが、今度こそは適切な対応をしたいと思いました。
また不登校を経験した私達の場合、既に自分の子ども達はこの話にあったような大事なポイントの時期はもうすぎてしまったかもしれないけれど、それを次世代に伝えていくことが大切だということーこれからの課題だなと思いました。
そして最後を飾るのは上野先生。「不登校の現状と支援について」というちょっと固い内容のテーマでしたが、子ども好きの先生らしい優しい語り口ですんなりと頭に入ってくるお話でした。
まずは不登校の現状・原因・支援についてー不登校児・生徒数は約13万人にのぼり、この10年間は横ばいで推移してきている。しかし、昨今の少子化傾向や保健室登校などが人数に含まれていないことを考慮すると実質的には増加傾向にあるといえる。
これを復学支援の面からみると、小学校では主たる原因となる本人の問題の解決が優先事項である場合が多いが、中学校では学校での問題が大きな原因となる場合が多いので、比較的早期に復学し、そこで学校、家庭および本人にある問題を並行して解決していくことが大切であり、訪問カウンセラーの担う役割がより一層重要になると考えている。
ではこれらの不登校に対する社会的な対応はどうなっているかー昨今では文科省からも「不登校とは誰にでも起り得ることで、総合的かつ個人にあった対策が必要」といった主旨の見解がだされている。しかし、現場からみると必ずしもそのような対策がとれる体制は整っているとはいえない。実際、困っている親子が公的な相談室などに相談したとしても、はからずも学校へ戻る道ではなく、学校以外の道(適応教室・心療内科・フリースクールなど)に行きついてそこにとどまってしまう(そうならざるをえない)という現状がある。もちろん、フリースクールなどの道を当事者が自ら選び取っていて、それがあっている場合もあることは否定しない。
ただ、「本当は学校へ行きたかった、もしくは行きたいと考えている当事者が多い」という文科省のデータを踏まえた場合、現状ではそういう当事者の気持ちがおきざりにされていることになり、復学支援を担う立場としては憂慮すべきことと考えている。
こういう現状を踏まえて、発足した当協会が目指すところは、家庭教育の重要性を広める事のみならず、このような子どもの「学校へ行きたい」という気持ちを後押しできる環境や子ども一人一人にあった選択肢を提供できるような窓口的な役割をになうことにある。
お話を聞き終えて、「子どもの本当の気持ちをくみとって、その夢や目標を実現できる社会にしたい」という先生の熱い思いがひしひしと伝わってきたように感じました。子育てに悩んで迷ってきた私達だからこそ、子ども達を支えるためにできる何かがあるのではないかと考えさせられました。
講演の後はグループセッション。「構成的グループエンカウンター」という手法?を用いて、「リフレーミング」というものを学びました。グループで話し合いながら、ある出来事を別の面から捉えなおすってことでしょうか。今回は家族に対するネガティブな気持ちをグループで話し合ってポジティブに捉えなおしてみるといったトレーニングでした。私は偶然にもブログなどを通じて交流のあった方々とグループになり、たくさんの意見がでて盛り上がりました。それぞれ一人で考えていると捉われてしまいがちなことでも、今回グループで話し合うことで、気持ちが開放されるように感じました。家に帰ってからも、このような気づきの時間を持つことを心がけるきっかけになったのではと思います。
セミナーは本当にあっという間に終わってしまいました。先生方から直接お話を聞けたことで、家庭教育推進協会のこと、HPでみているだけよりもずっとよくわかった気がしています。また、同じような考え方を共有するお仲間が大勢いることを実感できたことはとても有意義なことでした。
今回のセミナーは私にとって、学んだ事がこれからの家庭教育に役立つであろうことはもちろん、微力ながらもこれからの協会の活動を応援することで、困っている子ども達の助けになろうという決意を新たにするよい機会になったと思います。
レポート代筆: メリーベルさん
※当講演会のサイト上で掲載された「レポート」は執筆者個人の意見であり、所属の団体や組織等の意見ではありません。